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「天城越え」(1978年・NHK) ネタバレ 感想~松本清張先生も出演。これぞ松本清張ワールド! [気になる2時間ドラマ/SPドラマ]

土曜ドラマ「天城越え」(1978年・NHK)

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[あらすじ]
三十数年昔のこと、16歳の私は、はじめて天城を越えた。私の家は下田の鍛冶屋であったが、なんとかしてよその土地に出ていきたいと思っていた私は、静岡にいる兄が羨ましくてならず、6月の終わりに、かねてからの希望を決行する気になった。

天城のトンネルを通り抜けると、別な景色がひろがっていた。私は、「他国」を感じた。

湯ヶ島まで来たときには、もう夕方近くなっていた。向こうから、一人の大男が歩いてきた。一目で、他所者だと分かった。「あれは、土方だね。ああいうのは流れ者だから、気をつけなければいけない」と、呉服屋から言われた。静岡に行く元気がなくなった私は、下田に引き返す決心をした。

すると、そのとき、修善寺の方角からひとりの女が歩いてくるのが目についた。私は、その女が過ぎてから足の向きを変え、あとを歩いた。「そいじゃ、ちょうどいいわ。下田までいっしょに行きましょうね」。私は自分でも顔のあかくなるのを覚えた……。
[ウィペディアから引用]
原作はコチラ

松本清張『天城越え』

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DVDはコチラ



天城越えの映像化はこのNHK版が一番早い。


次に映画版の「天城越え」(1983年)

田中裕子が綺麗でねぇ。
こちらの映画の主演は渡瀬恒彦の刑事です。

記憶に新しいのは「天城越え」(1998年)

田中美佐子主演、少年役は嵐の二宮和也です。





上のあらすじは、原作のあらすじになります。

話は短編なので単純です。
少年が昔犯した殺人を当時事件を担当した刑事が訪ねてきたため、回顧する物語。
少年・鶴見辰吾の数十年後が宇野重吉先生の役です。


++++++

大正の終わり、天城峠で土工の死体が見つかり、一緒に行動していたと思われる娼婦が疑われる。
娼婦は容疑を否認するが、厳しい刑事の尋問についに落ちてしまう。
しかし裁判で自供を翻し無罪を勝ち取る。

土工を殺したのは少年だった。
少年は娼婦のことを綺麗な姉ちゃんだと憧れを持っていた。
旅の途中、彼女を守らなければというような気持ちもあったかもしれない。

しかし一文無しで売春宿を飛び出してきた娼婦・大谷直子は、土工(佐藤慶)を客にしようと思う。
少年にそんな場面を見せるわけにはいかない。

「あの土工に用事があるから、兄さん、先に行って頂戴」
と言われた少年。

「ここで待っている」
とこたえると、

「あんたは、さっさと先に行きなさい。すぐに追いつくから!!!」
と怒ったように命令。

気になる少年。
一度は二人を追い越すが、引き返す。
ボロ屋から姉ちゃんの声がする。

姉ちゃんと土工が交わっていました。
そしてことが終わると、土工から1円をもらっていた姉ちゃん。

土工のあとを付け天城トンネルの中で、持っていた「切出し」で男を殺めてしまった少年。
「やっと終わった」
と振り返り、安堵の表情を浮かべ崖から転落する土工。

少年が土工を殺した理由は、「嫉妬」かな?
自分の大切な綺麗なお姉ちゃんが男に汚されたと思ったのか・・・。
それとも綺麗な姉ちゃんが売春婦だと気づき許せなくなったのか・・・。


無罪を勝ち取った娼婦は少年を訪ねる。
娼婦は土工を殺した真犯人は少年ではないかと感じているようだった。

しかし少年には
「私のような女を本気で思ってくれたのは、兄さんだけだったかも知れない。ありがとうよ」
と伝える。

娼婦は借金返済のため九州の遊郭に鞍替えさせられる前に少年に会いに来たのだった。

殺された土工は、父が再婚し虐待をされていた。
土工には虐待の時に付けられた傷が背中にあった。
人とあまり交わらず、投げやりに人生を送ってきたようだった。


そして少年の犯罪を見ていた人がもうひとり、巡礼者の松本清張本人だ。
セリフもなく見つめるだけかと思いきや
「坊やいつかむかえなならん長い苦しみのために祈ってあげたよ」
と言うセリフまであった!!


昭和53年、印刷会社を経営している少年のもとへ、嘱託刑事がやってくる。
「天城山の土工殺し事件」を担当した刑事だった。
嘱託刑事は「刑事捜査参考資料」の印刷を依頼する。
「これは私の失敗作です。」
と刑事は言う。

当時は、娼婦の犯行だと決め付けていたが、今は違う。
氷倉の足跡は娼婦のものだと決めつけていたが、氷倉に泊まったのは「少年」ではないかと思う。
しかし刑事は、少年の犯行動機がわからないと言う。
土工は金を持ったまま死んだ。
金が欲しかったわけでもない・・・・・。
なぜ少年が土工を殺す必要があったのか。
しかしあの少年の家は下田の鍛冶屋を廃業し、もうどこにいるのかもわからない。
時効はとっくに過ぎているし、なにもわからないと言う刑事。

嘱託刑事は宇野重吉が真犯人だと気づいていたのか?
その目は「犯人はあなたですね。」と言っているように見えた。





原作では30数年後に元・少年のもとを刑事が訪ねますが、今作は冒頭のテロップで「53年・夏」と出ていたので、50年近く経ってから元少年を訪ねたのかな?と思う。
宇野重吉さんも当時は60代でしたし・・・。

原作と違う点は少年の年齢と少年が土工を殺した動機でしょうか。

原作の「私」は16歳ですが、NHK版の私は12歳です。
少年役は鶴見辰吾。
まだ声変わりもしていません。
めっちゃ可愛いのw


「天城越え」は松本清張の短編で単行本『黒い画集2』収録されています。
多分、50ページくらいの短編だったと思います。

原作の「私(少年)」が土工を殺した理由は、小さいころ母親が愛人と性行為をしているのを目撃してしまい、娼婦と土工の性行為を見て、フラッシュバックしてしまった。
「自分の女が奪われた」と思ったからでした。
今作では、母と愛人のことは出てきませんでした。

娼婦が無罪になったその後も原作にはありません。
映画版では獄中死したと思う(うろ覚えですが・・・)が、今作は、無罪になったあと売春宿に旅立つ前に少年と会い礼を言う。
田中美佐子版では、数十年経ってからどこかで働きながら老後を送っていたのだったと思う。

娼婦のその後としては、NHK版が一番スッキリしたかなぁって思う。



私が始めて観た「天城越え」は田中裕子の映画版。
匂い立つような娼婦でした。
もう、本当に綺麗でねぇ。
真っ赤な口紅が印象的でした。
菩薩のような天女のような・・・・。

NHK版の大谷直子は、年齢は28歳位なんだけど、随分やつれている。
これはほぼすっぴんだからかなぁ?
12歳の少年からしたら「姉ちゃん」ではなく「おばさん」に見えたんじゃないかな?というほど。

そして土工役の佐藤慶さんが、ちょっと落合博満に似ていて驚く。
黒くて(メイクです)、ギラギラした目はびっくりするくらい落合だった(苦笑)

あ、原作では土工の過去の記述もなかったなぁ。
今作では虐待された過去があった。
これは同じ松本清張作品の「鬼畜」からのオマージュかしら??

久しぶりに宇野重吉さんを拝見し、やっぱり素晴らしいなぁと思ったり、松本清張先生を見ると、竹中直人を思い出したり。
めっちゃ若い梅津栄さんに驚いたり、荒井注はいつ見ても印象が変わらないなぁって思ったり。
そして嘱託刑事役、中村翫右衛門さんの存在感。
これは昨今のスペシャルドラマでは醸し出せない重厚感なのです。

そして
鶴見辰吾の可愛さに驚きました。
私が知っている鶴見辰吾は、中学生でパパになった「3年B組」のクルクルパーマの時代が一番若い記憶。
それよりも若い・・・ってか、幼い。
まだ声変わりもしていない鶴見辰吾は、ほんっとに可愛い!!!
ビックリするほど可愛いよ~~~~~。
今はとっても渋い鶴見辰吾ですが、10代中盤から30代まではさほど可愛いともカッコ良いとも思っていなかった。
しかし子役の鶴見辰吾のポテンシャルは素晴らしい。
まだまだ子供のくせに、随分年上の娼婦に恋心を抱き、土工に嫉妬し殺してしまう。
殺害前に土工を睨みつけるあの目はそうそうできるもんじゃない。
かわいいだけではなく演技も上手だった。

演出は和田勉。
けれど、さほどエロシーンはなかったですw
大谷直子のポロリもありませんので、それが目当ての人には物足りないでしょう(爆)

面白かったですねぇ。
1時間半、すごく短く感じました。

松本清張作品を無理やり引き伸ばしたり、現代設定にするより、原作の雰囲気をそのまま映像化することが一番面白いのだと思います。
そこに少しの映像化ならではのエッセンスを加えるだけで良い。

こねくり回して現代設定にし、1時間半で終わるような内容をガンガン引き伸ばし、原作を改悪するととたんに面白くなくなってしまう。
今だとこの作品も「完全犯罪」って言葉で片付けそう。
そもそもこの作品を現代にしてしまったら・・・・恐ろしい。
なんの味もしなくなってしまうだろうな。

今回は、CSの無料放送で視聴しました。
久しぶりに「松本清張」観た!!って思いましたよ。
楽しい視聴時間でした。

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(キャスト)
大塚ハナ   :大谷直子
土工     :佐藤慶
少年     :鶴見辰吾
田島刑事   :津田恵一
山田警部補  :玉川良一
江藤署長   :鈴木智
湯ヶ島署巡査 :東治幸
下田署の巡査 :小野泰次郎
巡査     :大久保正信
大島署の刑事 :小篠一成
大島署の刑事 :菊池凡平
大島署の刑事 :根元和史
佐藤留吉   :宇野重吉
田島老人   :中村翫右衛門 (3代目)
あいまい屋の女将:阿部寿美子
あいまい屋の客:梅津栄
菓子屋    :荒井注
呉服屋    :柳谷寛
土建屋    :大塚周夫
石森隆太   :鈴木慎
土産物屋の老婆:堀越節子
飯たき    :披岸喜美子
運転手    :稲垣昭三
医者     :肉倉正男
助手     :小島光貴
印刷屋の事務員:今野鶏三
青年団員   :前田敬
青年団員   :井口雅之
古池旅館主人 :瀬川新蔵
少年の母   :山之内慈美
巡礼者    :松本清張(クレジットは無し)
ほか

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コメント 2

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saki

まさに今録画を観ています。
同じくCS無料dayですね。
私は「おさな妻」も録画しました。

犯人はなんとなくわかってたものの、
描写も音楽もいいし、何より役者陣がすごい[exclamation]
鶴見辰吾もかわいいだけじゃない~。
佐藤慶さんも荒井注さんも若すぎてわからなかった(笑)。

こういうの見ちゃうと、清張作品は平成じゃ無理って思いますよね。

関係ないですが、大谷直子さん、
録画した昔の(調べたら91年でした)サスペンスの主演で、
デキる女流作家を演じてたんですが、
まぁ色っぽいというか、大人です。
設定37でしたが、今の私よりぐんと年下[exclamation]
昔の大人は本当に大人っぽかったですね。特にサスペンスではお色気ムンムンで。
by saki (2016-06-07 12:21) 

tarotaro

sakiさん、書き込みありがとうございます。

「おさな妻」もあったんですねぇ。
松本清張ばっかり録画したんですが、「指」はゴマキ主演のほうだったのでガッカリでした。
名取裕子主演が見たかった!!

佐藤慶さんは面影がなかったですw
荒井注さんは声が変わらないですよねぇ。

こういう湿り気のある雰囲気って、今は出せないんですかねぇ?
何年か前にみたビートたけしの「点と線」はかなり良かったと思うんですが、その後の張り込み」は駄作でしたけど・・・。
作ろうと思えば出来ると思うんですが、予算がないのでしょうか?

大谷直子さん、美人ですよねぇ。
確かに昔の女優さんって大人っぽいです。

サスペンスはお色気成分が減りましたよねぇ。
昨年末でしたか江戸川乱歩の「黒蜥蜴」(真矢みき主演)を見ましたが、江戸川乱歩からエロとグロをなくしちゃって、なんの味もしないドラマになっていました。
もちろん舞台は平成。

映像化するなら、時代背景だけでも考えて欲しいですね。

by tarotaro (2016-06-07 21:48) 

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